恋と窓シリーズ------恋と窓の進化形 -10,000hit 記念-
恋と窓シリーズ
恋と窓の進化形 -10,000hit 記念-
06
「叶、もっ、そこやだっ、やだぁ…」
後ろを綺麗に洗ってもらったせいか、叶の愛撫は容赦がなった。いつもなら後ろの襞を外から舐めるくらいにとどめるところを、中にまで舌を挿れられる。
それだけでも充分恥ずかしいのに、今の俺の体勢はすごいことになっている。
仰向けに寝そべった俺の腰は叶の膝の上に抱え上げられ、叶の執拗な愛撫のせいで力の入らない足は左右にだらりと大開脚して垂れていた。涙に濡れた顔も、赤く染まったチクビも、涎を零しながら勃ち上がったアソコも全てが丸見えだ。外はまだ明るくて、ナカまで見えてしまっているんじゃないかと思うと、もう居たたまれなさ過ぎる。
「ゃ、ゃだ、ぁ、ぁ」
叶の舌がくにくに動いては俺を苛む。
――変な味とか匂いとかしたらどうしよう。
そう思って、やめてくれと何度も頼むけれど叶はやめてくれない。それどころかヒートアップしているようにさえ感じる。
そんなところ旨くないだろ――!!
せいいっぱい腰を動かして抵抗したら、さらに舌を差し入れられ叶の歯が皮膚に当たって、また別の意味で腰が揺れる。感じ過ぎて涎を垂らし続けるアソコはもう限界まで育っていた。
「か、かな……っ」
「わかってる」
叶に前を握って上下に擦り始めた。
「や、ちがっ」
俺は気力を振り絞って首を振った。
確かにソコはもうイキたいといっているけれど、俺は―――。
動かすなと叶に追いやられていた腕を俺は持ち上げた。そして、膝を抱える。
「こ、ここ」
俺は羞恥で朦朧としながら、なんとか言いのけた。
叶にさんざん解されたソコはグニャグニャにとろけていて、叶を逃さんばかりに痙攣している。
もう、舌だけじゃ物足りない……。
「…いいよ」
叶は顔を外した。そして、俺の腰を抱え直すと熱くたぎったモノを俺に押しつけた。そのまま擦りつけてくる。
「は、はや、く」
「いくよ……っ」
切羽詰まって俺が言うと、叶は俺のアナに宛がって突き入れた。
「あ、ああああっ」
待ってましたとばかりにアソコが歓喜に震える。ビクンビクンと揺れて、叶が三度も擦らないうちにイッてしまった。
「ぅ、ぅぁ…」
トプッと白濁が零れる。尿道を出て行く感覚に身震いした。体中が弛緩し呆としていたところで、叶がイッたばかりの俺のを掴んで擦り始めた。
「ぇ…っ」
過ぎた快感に耐えられなくて、咄嗟に止めようと手を伸ばすけれども、あっさりかわされた。叶が白い液を親指で掬って鈴口に塗りこめてくる。
「ダメだよ、晴季。僕はまだなんだから、つきあってもらわないと」
「ぁ、ぁ、あっ」
指の先が鈴口の中に侵入して、喉を反り返した。同時に腰の動きも再開される。
叶の動きは自分の快感を追うよりも、俺の反応に合わせているみたいで、俺が気持ちよくなるトコロばかりを擦り上げた。それは入口近い浅い場所で、叶のエラがそこを重点的に攻めてくる。固くてぬるぬるした叶のがそこを擦ってくると俺はもう堪らなくて、恥も外聞もなく喘ぎ声を上げた。
「かなっ、かなっ、もうっ!!」
「う、うんっ、僕ももう無理っ」
煽り立てられた俺はまた限界を迎えて、悲鳴交じりにそれを訴えると、叶は腰を抜ける寸前まで引いてズンズン押し入ってくる。
「も、も、も、ああっ」
「いいよっ、はる、イッって!!」
叶は力強く俺の奥の奥まで突き入れ、そして俺に覆いかぶさった。俺の上で叶が荒い息を整えながら髪を優しく梳かれる。
「ぁ、ぁ…」
ひと仕事終えましたという風情の叶とは逆に、俺は高められ過ぎた快感がまだ体のなかを燻って、痙攣がなかなか納まらない。トロトロと白濁が流れ落ちる度に、いやらしいアソコが物欲しそうに震える。
「で、出てって、叶」
俺はうつ伏せになってそれを隠そうと、叶の体をやんわり押しのけた。けれど、腕をとられて代わりにキスを押しつけられる。珍しく音を立てて舌を絡め合って、耳を犯される気分だ。これ以上はダメだと思っても、止めどない快感に腰が浮いた。
「あぁぁ…」
必然的に中にいる叶がグリッと内壁を擦る。同時にまだ固いアレを叶の腰に押しつけることになって思わず涙が浮んだ。
「も、もう無理だから、叶っ」
許してほしくて訴えたら、また俺の中の叶がほんの少し動く。
「あ、んっ」
小さな刺激が一気に全身へと伝わった。それだけで、ありったけの体力を使い切ったはずの俺の体は、もう次の快感を求め始める。けれど、叶は俺の顔を覗き込むと、優しい優しい意地悪な笑顔で「もう限界のようだし、続きはまた今度」と囁いた。
「やっ、まだ」
俺が答えようとすると、叶の腰が小刻みに揺れる。
「そう? 無理にしなくてもいいんだよ」
動きが加速した。頭が震動なのか気持ちよさのせいなのか、まともに働かない。
「ゃ、ゃだぁ…」
ただ俺は駄々をこねるように頭を振った。
「仕方ないな…。じゃあ、僕の言うことを一つ聞いてくれたら続けてもいいよ」
惚けたまま、こくこく頷く。叶は腰を動かしながら、俺の耳元に唇を寄せて言った。
「ここにローター入れてもいい?」
「ぇ…、ゃ、そ、それはダメッ」
「大丈夫。今度は気持ちよくしてあげるから」
それが原因で喧嘩になったというのに、叶はそんなことすっかり忘れたような感じでさらりと言う。そして、俺から離れてサイドテーブルにあった見知らぬ箱を手にとると中身を漁った。そこからは言わずもがな……。陣野がごみ箱に捨てたのとはまた別の、デザインの違うローターが現れる。
「やだやだっ」
なんとか逃れようとシーツの上を引き下がれば、腰に巻いていたバスタオルを引きずり下ろされてしまう。
「逃げたらだめだよ。このままだとローターに対して嫌な思い出ばかりが残ってしまうでしょ? これは晴季を気持ち良くするための道具なんだから、怖がることはないよ。僕に任せて」
「ま、任せるって……」
だから、それが一番怖いんだって――っ!!
口では言い出せなくて俺は涙を浮かべて、せいいっぱい目で訴えかけた。けれど、叶は何を勘違いしたのか、さらに笑みを深めて俺を抱き寄せる。
「そんな目で期待されると僕も張合いがあるな」
「……えっ。ち、ちがっ」
否定しようとすると、遮るように唇を重ねられた。そして、俺の腕ごと体をきつく抱き締めてきて、上半身がまったく身動きとれなくなる。
「かなっ、こわい、こわっ」
叶は大丈夫だからと俺を慰める言葉をかけつつ容赦なくローターを宛がう。俺は阻止するために力を入れた。でも、さっきまで陣野と叶の二人に解されたソコは柔らかに弛んでいて、難なく受け入れてしまう。
「ひっ、あ、あぁ…」
にゅるりと吸いつくように入って、叶の指と共に奥へと導かれた。ひんやりと冷たいプラスチックの塊は、感じたくなくてもどこにあるのかその存在がはっきりと内壁から伝わってくる。今度のはコード付きだから穴から尻尾みたいに出ているかと思うと、俺はもう恥ずかしくて、でも逃げ出せなくて、せめて表情だけは見られまいと叶の項に顔を伏せた。すると、叶が俺の耳にキスをしてくる。
「ねぇ、晴季」
耳元に叶の息が吹き込まれて、思わず首を竦めた。俺の過敏な反応に、叶が吐息で笑う。
「晴季、大丈夫?」
「……やだって言った」
「うん、でも今度はちゃんと僕が最後まで面倒みてあげるから」
「も、やだぁ…」
「晴季ってば嫌だって言うばかりだ。気持ちよくない? そんなことないはずだよ。簡単に入っていったしね」
俺はめいっぱい首を振った。微動だったのにもかかわらず、あんなにも感じてしまっていたというのに、本気で使われたら自分がどうなってしまうか怖くて仕方がない。でも、叶は自分の意見を押し通そうとするときいつもする、背を抱き締めて擦りながら落ち着いた口調で諭しにかかってきた。
「さっきはローターは嫌なものじゃなくて気持ちイイものなんだと分かってほしいみたいなこと言ったよね。それもあるけど本音はね、恋人に洋服を送りたいと思うのと似たような感覚なんだ。脱がせたいためにプレゼントする、というように。晴季をたくさん虐めて気持ち良くさせて、最後には僕がそこから救い出したいって思ったから……。確かに最初は陣野君とのデートに対する牽制だった。でも、今までこんな玩具使ったことなかったのに、急に取り出してきて不審に思わなかった? 変だよね。本当はいつか二人にとって特別な日にでも使おうと思って前々から用意してたんだよ」
「お、俺は叶のだけで充分だよっ」
顔が熱い、異様に熱い。なんでこんなことを言わなければならないんだよ……。言葉で羞恥攻めにされているような感覚に襲われる。
「うれしいな。でもね、この先まだまだ何十年と晴季と一緒にいるつもりなんだよ、僕
は。マンネリだけは避けたいからね」
フフッとまた耳元で笑われて、俺の体はやっぱりピクンと跳ねた。そして、突如として体の中が震動音と共に震え出す。
「う、あぁ……っ」
俺は叶に力いっぱいしがみついた。何かにすがってないと耐えられそうにない。頭がおかしくなる。
「か、かなえっ。入れて、は、早く叶の入れてっ!!」
ローターの動きよりも強く揺さぶってくれれば、きっといつもの慣れた快感に安心するのではないかと思って、俺は照れも羞恥も脱ぎ捨てて叫んだ。叶は俺の腕を少し強引に自分から外すと、ゆっくりと頭を下げてゆく。
「やだっ、かなえ! それはいやだ!!」
叶がしようとしていることを悟った俺は、ぶんぶん頭を左右に振って叶を押し退けようとした。けれど、叶は易々と俺の勃起した腹までたどり着くと、にゅるっと咥え込む。
「いやぁああっ」
それだけで俺の腰はビクビク揺れた。背中が反り返って、ベッドとの間に空洞ができる。少しでも叶が身動きできないように叶の頭を足で挟んだら、足首を掴まれてベッドに押しつけられた。
為す術の無くなった俺は、それからはもう叶の動くままアンアンと喘ぎ声を出すばかりで……。イキそうになると叶の手に阻まれ出るものも出せずに、空イキの状態をくり返して泣いて頼んでやっと達するというのを何度もやり、叶に入れてもらったらもらったでローターのレベルを強にされ、もう最後の方は快感が酷過ぎて、頭の中が常に真っ白に何も考えられなくなる。喉からは意志とは関係なしに声が溢れ出し、小型犬のように叫びまくっているのを自分で分かってはいても、声を出さずには快感をやり過ごせなかった。
「ローターもたまにはいいものでしょ?」
などと、もう眩暈を起こしたようにベッドに倒れ込んだとき、叶にしらっと言われたけれど、たまにはどころか二度と使ってくれるなとしかその時は思えなかった。与えられる快感が全身を占めて、頭は叶のことしか考えられずに、理性では拒否反応を起こしても、体は素直にもっともっとと叶を求めてしまって……。そのあまりの中毒振りに自分で自分が怖くなる。一回や二回はよくても、これが何度も続くと本当に自分はダメになってしまうのではないかと恐怖に駆られる。いつでもどこでも叶のことを思い出し、何も手につかなくなるのではないかと……。叶にそれを言うと、きっと喜び勇んで続きをしてくるだろうから、俺は僅かしかない気力でたっぷりと叶を睨んだ。そして、二度と叶に誤解を生むようなことはしまいと、心に誓ったのだった。
***
「それで、叶クンと仲良くエッチの続きをしたわけか」
俺は思わずブッとコーヒーを吹き出しそうになった。怖々視線を上げれば、陣野が白い目で俺を見ている。
「アハハ……」
借りたハンカチを返しがてら陣野と二人コーヒショップに入った俺は、陣野に迷惑をかけた謝罪とお礼を言うついでに、叶と和解したことをかいつまんで話したのだが……。エッチの件を抜かして事の次第を話したつもりが、あっけなく見透かされた。
「結局、俺は当て馬だったわけだ」
「……いや、それは言い過ぎだと」
「そのまんまだろ。当て馬の意味知っているのか」
牝馬に発情を促すために宛がわれる牡馬……。ハイ、お前の言っていることは大筋間違っていません。
心の中でそう思っても、まさかその通り答えられるわけがなく、俺はただ黙りこくって陣野の怒りが収まるのを待つしかない。
情けない顔になっているだろう俺を陣野は胡乱に見やり、やがて大きく溜め息を吐いた。
「まったく、今回限りだぞ。次からはお前が同じような目に合ったとしても俺は無視するからな」
「……ハイ」
「で、今日は大丈夫だったのか」
「え」
またもや陣野が呆れたような視線を送ってくる。
「叶クンだよ。今日は仕込まれてないだろうな」
仕込むって――。
あ。
固まった俺の手からボール紙のカップが滑り落ちる。中身が零れるかと慌てたが、運よくテーブルの上に垂直に立った。
……玩具のことか。
まずいと思いつつ、顔に血が上るのを止められない。
「あ、う、うん…」
「なんだよ。はっきりしない返事だな」
またも陣野が不審げに見てくる。そして、
「帰る」
そのひと言共に、宣言通りすかさず立ち上がった。
「ま、待てっ。今日は何もされてないって」
俺は急いで立ち去ろうとする陣野の袖を引っ張る。
「じゃあ、なんで言葉に詰まったんだ」
「それは……」
陣野が目を眇め、じりじりと焼きつくように睨んでくる。言い返せずにいる俺に痺れを切らして、また踵を返そうとするのを無理に引き寄せて席に着かせた。
「なんだよ……。言えよ」
不機嫌にも陣野は大人しく座り、俺を横目に見ながら足を組んだ。
「うん……」
「何言われたって今さらだ。少々呆れても怒りはしない」
鼻息荒く言われ、もうすでに怒っているような気配に、さらに言い淀んだが、ここまで引っ張って言わないわけにはいかない。俺はひと呼吸つくと、徐に口を開いた。
「今は何ともない。ただ……」
「ああ」
「帰ったあと、その……」
なんとも言いにくい俺は、これで分かってくれと上目遣いに陣野を見た。それに対して陣野は何か悟ったらしく、あからさまにうんざりと項垂れる。
「またかよ……」
――人を当て馬扱いしやがって。
陣野はさも嫌そうにぼそっと言った。眉間に皺が深く刻まれる。
ああ、機嫌が急降下している……。だから、あまり言いたくなかったんだ。
俺はそんな陣野を見つつ、昨夜の叶を思い起こす。
陣野と会うことを素直に報告したのだが……、にこにこと笑う叶はどこか不気味だった。別段文句を言われたり、無茶な提案をされたりなどということはない。
ただ……、
『晴季が帰って来たあとが楽しみだな』
とだけ言われた。加えて、ね?と微笑まれ、咄嗟に何が?とつっこむこともできなかった。
いったい何が楽しみだと言うんだろう。
なんとなく分かるような分かりたくないような……。
心では困惑していても、体はある期待にゾクゾクと震えた。叶が言った言葉が今になって俺を苛める。
『ローターは気持ち良くなるための道具』
初めはそれに嫌悪感を持っていたはずが、いつの間にか叶によって快感の記憶に塗り替えられている。今日アレを使われるのかと思うと、体が火照って仕方がなかった。
「おい」
不意に声がかかり、俺ははっとして陣野を見上げた。
「じ、陣野……」
そこにあったのは鬼気迫る形相。
ヤ、ヤバイッ。
「今度こそ帰る!」
陣野は派手な音を立てながら席を立って、俺が止めるのもむなしくさっさと店を出て行った。
「あぁ……」
とうとう怒らせた。陣野を追おうと中途半端に上げた腰を力なくまた椅子に沈める。
「これじゃあ、陣野と会うに会えなくなるよ……」
俺は陣野の消えた窓外に向け、頬杖をついた。
きっと会うたびに陣野はダシにされたと怒るだろうし、叶は叶で陣野をダシに交換条件を出してくるだろう。叶の出す条件は甘受できても、陣野を無闇に怒らせるのは本意ではない。
「せっかく、お互い恋人が男だって分かり合えたのに」
小さく不平を零してみるものの、帰ってしまった陣野に届くはずがない。
その後俺の予想は見事的中し、やっと陣野と連絡がとれたころにはそれからひと月以上が過ぎていた。会うのも不承不承で無理やり叶には内密にしろと約束させられる。俺がどう叶を誤魔化そうか、頭を抱えたのは言うまでもない。
-了-
ひとまず晴季と叶の話はこれで終わりです。ありがとうございました。
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